ウォーレン・バフェット ウォッチャー

"投資の神様"と名高いウォーレン・バフェット氏をウォッチするブログ。同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の動向と関連する情報をフォローする。

バフェットの日本への投資②「タンガロイ」

バフェットの日本への投資シリーズ第2弾です。(第1弾はバフェットの日本への投資①「日経平均プットオプション」 - ウォーレン・バフェット ウォッチャーをご参照下さい。)


バフェットがCEOを務めるバークシャーには"Powerhouse Five"と総称される非保険事業で収益の柱となっている5社があります。BNSF(鉄道事業)、Berkshire Hathaway Energy(再生可能発電事業)、Marmon(複合企業)、Lubrizol(特殊化学品事業)、そしてIMC(超硬工具事業)です。


今回紹介するのは、このIMCが保有するタンガロイという日本企業になります。




IMCはベルトマイヤー家が創業したIscarという超硬工具事業を営む企業を中心としたホールディングカンパニーでしたが、2006年に株式の80%をUS$50億(当時の日本円換算で約5800億円)でバークシャーに売却することを発表しました。更に、IMCとバークシャーは2013年に残り20%をUS$20億(当時の日本円換算で約2000億円)で売買することに合意し、IMCはバークシャーの完全子会社となりました。


一方、タンガロイは1929年に後に東芝となる企業によって設立された、こちらも超硬工具の会社です。2004年には東芝のノンコア事業となり、MBOによって野村グループによって買収、非上場会社となりました。


2006年に上述の通り、IMCは既にバークシャーの子会社となっていましたが、リーマン・ショック直後の2008年9月、IMCは約700億円で野村グループから約90%(タンガロイによる資本提携先であったOSGからの自社株買い含む)を譲り受け、タンガロイを子会社化しました。当時のタンガロイの売上高は500億円、純利益が37億円でしたので純利益に対するmultipleは約20倍でIMCはタンガロイを買収したことになります。


IMCによるタンガロイの買収はリーマン・ショック直後で競合は軒並み設備投資を手控えていましたが、そんな中タンガロイの売上高の約2割に相当する金額で新規投資をしたり、東日本大震災で福島市にあるタンガロイの工場が被爆の風評被害にあった際に技術的支援をしたりと良好な関係を築いてきました。


バフェットにとってタンガロイは買収先による買収先で孫会社の位置づけですが、M&Aを含めて投資先企業の成長を長期的に見守るバークシャーにとって、IMCは典型的な成功した大型買収であったと言えるのではないでしょうか。








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バークシャーが配当を支払うとき

バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイは株主に配当を支払っていません。利益を内部留保して更なる成長に向けて投資をするか、若しくは自社株買いをする方が配当を支払うより株主の為になるから、とバフェットが考えているからです。株主から配当をする様に求められたこともありますが、その案は他株主に圧倒的反対を以て否決されたことがあります。このことからわかる通り、株主も配当を望まず、バフェットにお金の使い方を委ねています。


ただ、物事には必ず終わりがあります。バークシャーの成長も限界を迎える可能性があることをバフェットは2014年のannual reportの中で以下の通り認めています。


「おそらく10~12年後には、経営陣が利益を賢明に再投資出来なくなる水準まで、バークシャーの利益や現金が到達するでしょう。その時には、当社の経営陣は利益を配分する最善の手段は配当か自社株買いか、若しくはその両方か、を決定する必要に迫られます。バークシャー株が本質的価値を下回る金額で売買されていた場合、大量に自社株を買い戻すことこそが最善の選択です。」


10~12年後、つまり、2024~2026年にはバフェットがいう「賢明に再投資出来ない水準」までにバークシャーは大きくなることが予想されます。では、その時の配当とはどれくらいの規模で、2016年の現在からバークシャーの株主である私たちにはどれくらいの現金リターンが見込まれるのでしょうか。


以下はバークシャーの2015~2026年までの純資産の伸び率を


①バークシャーの1965~2015年の伸び
②バークシャーの2006~2015年の伸び
③S&P 500の1965~2015年の伸び
④S&P 500の2006~2015年の伸び


の4パターンと同じと仮定して予想したグラフです(単位はUS$ billion)。



①のケースはバフェットも認めている通り、これまで程の伸びが期待出来ない中、非現実的な数字と言えるでしょう。バークシャーの伸び率が③・④のS&P 500よりは高いであろうことを考慮すると、②が最も現実的な数字ではないかと思われます。純資産がUS$700~800 bil.(110円/US$で換算して77~88兆円)にまで積み上がるケースですね。


では、そのときの配当額はどれくらいになるのでしょうか。


2026年の利益は上記の計算に基づくと、US$69 bil. (US$747 bil. - US$678 bil.)に上ると予想されます(⇒D)。また、2015年の純資産の1.3倍の株価US$336 bil.である株主が購入したとします(⇒C)。仮に配当性向30%とバークシャーの経営陣が設定した場合、配当総額はUS$21 bil.(⇒E)となり、購入した株価に対する配当の割合は6%(⇒F)となります。これが配当性向50%ですと、10%(⇒J)と比率が上がります。




バークシャーには投資先の業界の際限はありませんが(トヨタなら車に関係する投資しかしない)、純資産・現金が大きすぎるが故に買収のターゲットが絞られてしまうという贅沢な悩みがあります。2026年にはこの悩みが限界に達するとバフェットは予想している訳ですが、それでも株主は長期的な競争力を持った幾つもの会社の資産に裏打ちされた安定的な現金配当を手にすることが可能となります。


更に、配当を開始したと同時にバークシャーの成長が限界を迎えたと感じた株主は離れていき、その結果株価は下落するかもしれませんが、その時にはバークシャーがその余りある現金で自社株買いをし、残った株主に株価の成長を齎してくれるでしょう。


かくいう私は、自分で個別株に投資する自信は全くないので、2026年になってもバークシャーに内部留保して投資の機会を探してもらうことを望みます笑。






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バフェットが語るバークシャー・ハサウェイ社の株の購入に当たっての注意

バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社(バークシャー)の株購入シリーズ第2弾です。(第1弾はバークシャー・ハサウェイ社の株の購入方法 - ウォーレン・バフェット ウォッチャーをご参照下さい。)


バフェットはバークシャーの株を購入する際の投資家の注意点として、次の3点を2014年のannual reportの中で説明しています。


①自社株買い水準を少し超える程度の株価で買え!
②最低でも5年間保有する覚悟があるときに買え!
③借入をしたお金で買ってはならない!


1つずつ解説をしていきたいと思います。


①自社株買い水準を少し超える程度の株価で買え!


バークシャーは株価が純資産の1.2倍以下となった際に自社株買いを実行するルールを作っています。仮にバークシャーの株価が純資産の1.2倍以下となった時には、バークシャーが自社株買いを開始すると見込んだ投資家が、株価が純資産の1.2倍となるまで株を買い集めるので、結局瞬時に株価は純資産の1.2倍以上に戻ります。従って、投資家にとってバークシャー株を購入する際に最も現実的で安価なのは、純資産の1.2倍を少し超える程度の株価の時となります。(詳細はバークシャー・ハサウェイ社は買いか? - ウォーレン・バフェット ウォッチャーをご参照下さい。)


②最低でも5年間保有する覚悟があるときに買え!


株価は「短期的にみれば投票装置だが、長期的にみれば秤量機のように振舞う」とバフェットの師匠であるベン・グレアムは説きました。つまり、短期的には人気・不人気、短期的な成長性有り・無し、需給で株価は決まりますが、長期的にみればその企業の実力で株価は決まるということです。そしてバークシャーの実力に自信のあるバフェットはその長期を5年間と定義つけました。


実際に過去50年間でバークシャーの株を購入して、5年間株価が戻らなかった年は2007年だけです。


(バークシャー vs S&P 500 株価対比(1964年末を100とした場合)、出所:バークシャーのannual report 2014)


2007年の翌年にはリーマン・ショックが市場を襲い、バークシャーの株価も影響を受けました。リーマン・ショックの影響が凄まじかったのか、2007年のバークシャーの株価が過大評価されていたのかは定かではありませんが(恐らく後者です)、2007年末にバークシャーに投資した人は、5年を経た2012年末でも投資した時の株価を取り戻せてなかったということです。


但し、恐れることはありません。リーマン・ショックは「100年に一度の大不況」なのですから、確率論では今後50年間のどのタイミングで購入しても5年間株価が戻らないことは有り得ないということになります笑。


③借入をしたお金で買ってはならない!


過去50年間でバークシャーの株価が高値から半分程度になった回数は3回です。上述の通り、5年間を経れば株価は元に戻りますが、これを享受出来るのは株を購入した代金が自身の余裕資金であった人だけです。なぜならば、自身のお金ではあるものの余裕資金でなかった場合、又は借入で購入していた場合には、非常に高い確率でその5年間の間に手元に現金が必要となり、含み損を抱えながらも売却せざるを得ない状況が訪れるからです。


更に、バークシャーは配当を支払っていないので株主からすると現金化は譲渡益しか有り得ません。となればやはり投資を確実にする為には最低5年間が必要であり、長期間の投資に借入は相応しくありません。


以上、バークシャーの株を購入する際に気を付けるべき3点を見てきましたが、どれも頭では理解出来るものです。しかし、実際にバークシャーの株式を購入する際には、自社株買い水準を遥かに超える金額で購入したり、保有した後に株価が少しでも上昇すると売却したくなってしまう衝動に駆られます。


私もその様な衝動に駆られている一人です笑。








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