ウォーレン・バフェット ウォッチャー

"投資の神様"と名高いウォーレン・バフェット氏をウォッチするブログ。同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の動向と関連する情報をフォローする。

バフェットから学ぶお金持ちになる方法 ~シーズ・キャンディ~

今回はウォーレン・バフェットの投資を振り返ることで、彼からお金持ちになる方法を学びたいと思います。題材として見ていくのは、アメリカ西海岸を発祥とするお菓子メーカーのシーズ・キャンディです。バフェットは自身がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の子会社を通じて、1972年に同社を買収しました。2014年のアニュアル・レポートに同社の買収と、その後の結果について以下の通り触れられています。


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1972年はバークシャーにとってターニング・ポイントとなった年でした。シーズ・キャンディを買収する機会が訪れたのです。


同社は、アメリカ西海岸の伝説的な企業で、箱詰めされたチョコレートを製造・販売しています。当時は、僅か800万ドルの純有形固定資産を使って400万ドルの税前利益を稼いでいました。更に同社には、貸借対照表上には姿を現さない莫大な資産を保有していました。強力な価格決定力をもたらす、明白で永続的な競争優位性です。その強みのおかげで、同社は時を経る毎に大きな利益を生むことが出来ました。更には、追加投資が僅かな金額で済んでいました。言いかえれば、同社からは数十年にも亘って現金を生み出し続けることが期待出来たのです。


同社を売りに出した創業家は、3,000万ドルを対価として要求し、チャーリー・マンガー(※バフェットの相棒)はそれに見合うだけの価値があると見越していました。しかし、私は2,500万ドルしか払う気がなかったばかりか、たとえその金額であっても、全く魅力的に思えませんでした(純有形固定資産の3倍もの値段ですよ!)。私の間違った慎重さによって、この素晴らしい買い物がふいになっていたかもしれませんが、幸運なことに、創業家は私たちが提示した2,500万ドルを受け入れてくれました。


今日までに同社が上げた税前利益は、19億ドルに上り、その間に必要となった追加投資は僅か4,000万ドルでした。同社が莫大な額の資金をバークシャーにもたらしてくれたおかげで、バークシャーは他の事業を買うことが可能となり、更にそうして買った他の事業も同様に、利益を大量に生み出したのです。その上、シーズ・キャンディの経営を観察することを通じて、私は強力なブランドを持つビジネスの価値を学び、その他の高収益な投資先へと目を向けるようになりました。
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シーズ・キャンディ買収以降、1973~2014年までに合計19億ドルの税前利益を上げたということは、平均して毎年9%ずつ同利益が増えていったということになります。以下グラフにその期間の単年・累積の税前・税後利益の推移を示していますが、1972年には400万ドルだった税前利益が2014年には1.6億ドルを超える水準にまで到達したことになります。


また、絶対額で見ても、バークシャーが支払ったのは買収資金2500百万ドルと追加投資4000百万ドルですが、そこから12億23百万ドルもの税後利益が生み出されたので、差引11億58百万ドルを手にしたことになります。(※追加投資の減価償却費などは考慮していない)


以上の通り、シーズ・キャンディへの投資の軌跡を見てきましたが、この事例から学ぶことが出来る素晴らしい投資対象の企業の特徴は


①ブランドに基づく価格決定力がある(単価を上げることが出来る)

②追加投資が少なくて済む(少ない投資で数量を維持・増加させることが出来る)


の2点なのではないでしょうか?


一見日常にありふれたものでも、素晴らしい会社の可能性があるので、身の回りで当てはまる企業があるか探してみては如何でしょうか?

バークシャーが配当を支払うとき ~現金10兆円の行方~

8月4日(金)にウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ社が2017年2Q(4-6月期)の決算を発表しました。鉄道・エネルギー事業が好調だった一方、保険部門での損失が膨らみ、営業利益が前年同期比11%減の41億2000万ドルと市場予想を下回る結果となりました。


損益も然ることながら、今回注目を集めたのはバークシャーの現金及び同等物の額です。同社は過去50年近くにわたって配当を避ける一方、収益力の高い企業を買収を進め、株価が低迷したときにだけ自社株買いをすることで内部留保(≒現金及び同等物)を積み上げてきました。その結果、今回の決算(2017年6月末時点)でその額が997億ドルと10兆円を超える大台にまで到達しました。

2014年のannual reportの中で、バフェットはバークシャーの現金の使い道に対する考え方について以下の通り発言しています。(詳細はバークシャーが配当を支払うとき - ウォーレン・バフェット ウォッチャー参照)


「おそらく10~12年後(※2024~2026年頃)には、経営陣が利益を賢明に再投資出来なくなる水準まで、バークシャーの利益や現金が到達するでしょう。その時には、当社の経営陣は利益を配分する最善の手段は配当か自社株買いか、若しくはその両方か、を決定する必要に迫られます。バークシャー株が本質的価値を下回る金額で売買されていた場合、大量に自社株を買い戻すことこそが最善の選択です。」


この発言から、バフェットの現金の使い道が①(企業・株式・債権等への)再投資、②配当 and/or 自社株買いの順番で考えられていることが伺えます。また、バークシャーは2012年以来、自社株買いの条件を"株価が純資産の120%以下となったとき"としてきました。(詳細はバークシャー・ハサウェイ社は買いか? - ウォーレン・バフェット ウォッチャー参照)それ以外のときには配当を考えると理解してよいでしょう。


それでは、現在の市場の状況を見て、バークシャーの現金の使い道はどの選択肢が当てはまるのか、考えていきましょう。


まずは①(企業・株式・債権等への)再投資です。市場全体が割安かどうかを考える際によく用いられるのが、『バフェット指標』と呼ばれる「上場株式の時価総額÷GDP」の計算式です。100%を上回ると割高、100%を下回ると割安と判断します。2017年8月の現時点では、131.8%と2000年のITバブルに次ぐ高水準となっており、市場全体が割高な状態に置かれています。個別株や他の国の事情は一概に割高とは言えないので、この指標だけを見て「①の選択肢は有り得ない」とは断言出来ませんが、投資の神様であるバフェットといえど、容易に割安な投資対象を発見することが出来ない状態に市場があるのは間違いないでしょう。



では、②の自社株買いはどうでしょう。バークシャーの株価が"純資産の120%"を下回っていることが条件でした。以下のリンクで確認出来る通り、2017年8月10日時点で145.3%と大幅に120%を上回っており、バークシャーの株価が自社株買いに足るほど、割安だと言えない状況にあります。


Berkshire Hathaway Price to Book Value (BRK.A)


こうなると、残された現金の使い道は②の配当しかなくなります。バフェットはかつてバークシャーに最低限必要な現金として、『200億ドル』と発言したことがあります。大型のハリケーンなどが発生して、バークシャーの保険事業が多額の保険金を求償された場合に備える為に必要な額だそうです。裏を返すと、バークシャーには現時点で800億ドル(=1,000億ドル-200億ドル)もの配当余力があることになります。


上述した通り、バフェットはバークシャーが配当を迫られることになると見込まれる時期を2024~2026年頃と予測していました。また、2017年5月に開催された年次株主総会では数年以内に配当を開始する可能性を示唆したと言われていますが、順調に現金を生み続けるバークシャーの事業と好調な市場に挟まれている現状では、Xデーは意外とすぐそこなのかもしれません。

バフェットは何故アップルに投資したのか?

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ社が、iPhoneでお馴染みのアップル社の株式を約2.5%、170億ドル相当を購入したことを発表しました(2017年1月末)。"Big 4"と呼ばれるウェルズ・ファーゴ、コカ・コーラ等への投資と同等の金額を投じたことになります。


巷では、


『あのIT銘柄嫌いのバフェットがアップルに投資したということは、彼の投資方針が180°変わったことを示すのではないか』


等、あたかもアップルへの投資がこれまでのバフェットの方針と異なるかのような論説が目立ちます。


本当にそうなのでしょうか?アップル株に対するバフェットの言葉を様々な報道から拾ってみました。


(何故アップル株を購入したか、と問われ)『好きだからだよ!』


『アップルの製品は消費者を惹きつける粘着性があり、役に立つものである』


『私はiPhoneは持っていないが、iPadは持っている。誰かにもらったものだ。』


これらの言葉からわかるのは、バフェットがコカ・コーラやアメリカン・エクスプレスと投資したときと同様、アップルがブランドを確立していて、消費者を掴んで離さない魅力を持っているものと理解していることがわかります。


バフェットにとってのアップルは、『理解の出来ないIT銘柄』なのではなく、『理解出来る優れた事業』と映っているということなのでしょう。


更に、ファンダメンタルズの観点から考えると、アップルはこれまでの様なiPhoneの爆発的な販売量の伸びに陰りが見えて、売上高の伸びが1桁に留まっています。このことから、マーケットから成長が鈍化したと判断されており、米国株全体のPERが18倍程度の中、15倍程度に落ち着いています。


アップルに対する評価、ファンダメンタルズから考えても、『優れた事業をそこそこの値段で買う』バフェットの方針にアップルはぴったりとハマっていると考えられるのではないでしょうか。