ウォーレン・バフェット ウォッチャー

"投資の神様"と名高いウォーレン・バフェット氏をウォッチするブログ。同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の動向と関連する情報をフォローする。

ウォーレン・バフェット 株主への手紙 2021年

冒頭部分
・2020年通期の純利益(GAAP)は+U$42.5十億。内訳は営業利益+U$21.9十億、実現済キャピタルゲイン+U$4.9十億、未実現キャピタルゲイン+U$26.7十億、減損-U$11.0十億。
・2020年は大規模な買収を実現出来ず、営業利益は前年比-9%であった一方、内部留保増加と自社株買いによって一株当たりの本質的価値を+5%とした。GAAP上、Berkshireが保有するU$281十億に及ぶ上場企業の収益の内、受取配当分のみ利益計上されるが、投資先企業は利益計上されない内部留保を再配分し、その価値を高めている。
・減損-U$11.0十億は主に2016年に買収したプレシジョン・キャストパーツによるもの。2020年の航空産業衰退によって私が同社の収益基盤を楽観的に見過ぎ、計算ミスをしていたことが明らかになった。
Two Strings to Our Bow
・Berkshireは様々な関係のない企業の寄せ集めのコングロマリットと称されるが、それは一部分に過ぎない。歴史を紐解いてみたい。
・コングロマリットはビジネスの”全体”を買う様に制限してきた。それは戦略的ではあったが、素晴らしいビジネスが誰にも買われない状況を生み出した。ディールに飢えたコングロマリットはほどほどな企業を買うことを迫られた。更にコングロマリットは”支配”プレミアムを支払ってきた。ウォール街、メディア、そして上昇する株価そのものがそうした錯覚を現実のものと”証明”してきた。最終的にパーティーが終わったときにはコングロマリットは裸の王様だったことに気付くのだが。
・チャーリーと私は、Berkshireを通じて良好な経済条件とマネージャーと持つビジネスを保有したかった。但し、ビジネスを支配するか否かは重要ではなかった。チャーリーが、利益が殆どでないビジネスを100%保有するよりも、素晴らしいビジネスの非支配分を保有する方がより利益が上がると、私を説得してくれたからだ。こうした考えの下、Berkshireは支配分・非支配分の両方のビジネスを保有するに至っている。
The Family Jewels and How We Increase Your Share of These Gems
・Berkshireは多くのビジネスを持っており、36万人の従業員を抱えているが、Berkshireの価値は3つのビジネスと1つの企業の5.4%分の株式に集約される。
・最も大きい価値は損害保険だが、どの競合他社よりも小資本で回すことの出来る財務体質とBerkshireが保有する非保険事業からのキャッシュフローによって、保険会社が資本集約的な投資戦略を可能としている。競合他社は低利となった債券に集中せざるを得ない。Berkshireは利子のつかないフロートをU$138十億も保有している。
・第2・第3の価値は100%保有するBNSFと5.4%分保有するApple株で、最後が91%保有するBerkshire Hathaway Energy (BHE)だ。BHEはBerkshireが保有することとなった21年の間に年間の利益がU$122百万からU$3.4十億にまで成長した。
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・2020年にBerkshireはU$24.7十億を自社株買いに投じ、既存株主はBerkshireの持分が5.2%分増加した。自社株買いは、既存株主の一株当たりの本質的価値を上げ、Berkshireの余剰キャッシュを返す為に行った。多くの米国の経営者は株価が上昇したときに自社株買いをしているが、Berkshireの考え方は全く逆だ。
・自社株買いの効果はBerkshireのAppleへの投資が物語っている。Berkshireは2016年末から2018年7月迄にApple株を買い、その時点でBerkshireの持分は5.2%、取得原価はU$36十億だった。それ以来、年間平均U$775百万の配当を受領し、2020年にはU$11十億分を売却した。それにも関わらず、Appleの自社株買いによってBerkshireは追加コスト無しで現時点での持分を5.4%と当初より増加させている。又、この間、Berkshire自身も自社株買いをしたので既存株主のApple株の利益はそれ以上だろう。
Investments
・以下の表が2020年末にBerkshireが保有した上場株の内、最大の15企業である。Kraft Heinzは持分法を適用している為、除外している。(注:表は割愛。日本企業で唯一記載のある伊藤忠商事は5.1%分保有、取得原価U$1,862百万、評価額U$2,336百万)
A Tale of Two Cities
・(注:過去のLAのSee’s CandyとDCのGEICOの話。割愛)
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・(注:過去のOmahaでのNational IndemnityやNebraska Furniture Martの話。割愛)
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・(注:過去のKnoxvilleでのClayton HomesやPilot Travel Centersの話。割愛)
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・今日、多くの人々が上述した様な奇跡を世界中で起こし、全人類に恩恵を与えようとしている。但し、232年という短期間の存在にも関わらず、米国ほど人類の潜在性を解放するインキュベーターはいない。幾つかの重大な中断があっても、米国経済の進歩は驚異的だ。又、我々は”より完璧な集合”になるという憲法上の野心を持ち続けている。Never bet against America。
The Berkshire Partnership
・(注:主にBerkshireの歴史の話。割愛)
A Berkshire Number that May Surprise You
・Berkshireは、他の如何なる米国企業よりも、米国内でPPEを保有しており、減価償却後の固定資産はU$154十億に上る。次点はAT&TのU$127十億だった。
・但し、それ自体は投資の勝利を意味するものでない。最小限の資産で高マージンのビジネス、少ない追加資本で売上を伸ばせるビジネスがベストである。
・然し乍ら、資産過多の企業も良い投資対象となり得る。事実、BNSFとBHEは2011年に計U$4.2十億の利益を生み出していたが、2020年には計U$8.3十億となった。両社は今後数十年に亘り巨額の設備投資を必要とするが、追加投資に対して適切なリターンを得る見込みがある。
・BNSFから見てみたい。同社は米国内輸送の15%を担っており、他社よりも高マージンである。米国の鉄道の歴史は興味深い。150年の歴史があるが、成熟し、合理化されたのはほんの数十年前のことだ。BNSFはイリノイ州北部に於いて12マイル線で1850年に創業したが、390もの鉄道を買収した。
・Berkshireは2010年初にBNSFを買収したが、それ以降、U$20十億の減価償却費を超えるU$41十億を固定資産に投資した。現在では28週に跨り23,000マイルに亘る。
・それにも関わらず、BNSFはBerkshireに計U$41.8十億と多額の配当を拠出した。それでも保守的な方針であり、BNSFはBerkshireからの保証無しで低利で借入している。
・2020年にBNSF経営陣は7%の輸送量減にも関わらず、利益を2.9%増加させた。
・BHEはBNSFとも、一般的な電力業界とも異なり、Berkshire傘下となって21年間、配当を出していない。鉄道と異なり、我が国の電力業界は驚異的なコストを要するからだ。ただ、我々はチャレンジを受け入れ、追加投資が適切に報われると信じている。
・BHEは西海岸の老朽化したグリッドの修復・拡幅にU$18十億をコミットした。このプロジェクトは2006年に開始されたが、2030年に漸く完了となる見込み。
・RE出現は我々のプロジェクトを社会的に必要なものとした。石炭火力は人口の中心に位置することが多かったが、風力・太陽光は離れた位置であることが多い。BHEが2006年に調査したところ、莫大な投資が必要であったが、当時、その投資に耐え得る財務体質の企業・政府機関は存在しなかった。
・BHEの決断は、米国の政治・経済・法律のシステムに対する信頼によって為された。売上が計上される前に多額の投資が必要であり、送電網は夫々の規制を持つ様々な州に跨る。BHEは何百という地主と交渉し、RE事業者と遠距離の電力会社と複雑な契約を締結しなければならない。
・驚きと遅延はつきものだが、BHEは約束を果たすだけの能力がある。西海岸のプロジェクトが完了する前だが、同じ様な規模のプロジェクトを手掛けようともしている。
・如何なる障害があろうとも、BHEはクリーンなエネルギーのリーダーとなる。
The Annual Meeting
・5月1日13:30-17:30@EDTにYahooにて開催予定。

バークシャー・ハサウェイ社のポートフォリオ比較(2007年 vs 2017年)

銘柄の長期保有方針で有名なウォーレン・バフェット氏ですが、実際のところはどうなんだろう?という疑問を持ったので調べてみました。今回は2017年末と10年前の2007年末のポートフォリオを並べて、保有時価のトップ15の顔ぶれを比較してみました。若干字が小さくて読みづらい点はご容赦下さい。


左が2007年末、右が2017年末のトップ15(いずれも出典はアニュアル・レポート)です。濃い緑が売却した銘柄、薄い緑が一部買い増し・売却はあるものの、維持した銘柄、白抜きは新規で購入した銘柄です。この表から読み取ることの出来ることを以下に挙げていきたいと思います。


①「長期投資はウソ?」
2007年末のポートフォリオを見ると半分が濃い緑になっています。長期保有のイメージのあるバフェットでも実際には大幅にポートフォリオを入れ替えていることが一目瞭然です。


②「消費財メーカーへの評価が落ちている?」
2007年にはP&GやJohnson & Johnsonといった世界に名だたる消費財メーカーがランキングのトップにきています。ところが、2017年には両社の名前が消えているどころか、そういった銘柄は一社も入っていません。小売業によるプライベートブランド創設等、競争が激化してきていることが背景にあるのかもしれません。


③「金融・航空銘柄への評価が上がっている?」
2017年には、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン等といった銀行系の銘柄が入ってきています。これは2008年に起きたリーマン・ショック時に割安で購入した銘柄が殆どですが、往年の主力株であるウェルズ・ファーゴと並んで引き続き保有している点を考えると、バフェットは引き続き銀行・金融には明るい未来を見通しているのかもしれません。


また、特筆すべきはサウスウェストやデルタといった航空銘柄がランキングインしている点です。かつては景気連動型で従業員のスト等が絶えず、儲からない業界の典型でしたが、昨今は合従連衡が進み、恒常的に利益が出る体質に変わってきました。この変化を捉えてのランキングインとなった様です。


時を経る毎に保有銘柄・業界を巧みに変えていくバフェットのポートフォリオからは目が離せません。

バフェットが保有する銘柄から学ぶ

ウォーレン・バフェット氏(正確には同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社)が保有する最新の銘柄を確認し、同氏の考え方を学んでみたいと思います。


それでは、早速、2018年6月30日時点で同社が保有する銘柄(単位:U$十億)を確認していきましょう。


アップル 約U$56十億(27%)、ウェルズ・ファーゴ 約U$25十億(12%)、バンク・オブ・アメリカ 約21十億(10%)、コカ・コーラ 約18十億(9%)、クラフト・ハインツ 約18十億(9%)、アメリカン・エクスプレス 約17十億(8%)となっています。


バフェットが保有する銘柄の合計は約U$208十億(約23兆円)です。その内、約3/4を6銘柄が占めていることがわかります。1/4を超えるAppleが約U$56十億と突出していて、その他が10%前後ずつを占める構成です。


ここから一般的な投資の格言とバフェットが如何にかけ離れているかがわかります。以下の通り見ていきましょう。


「卵は一つの篭(かご)に盛るな」
投資をするときに気を付けるべきポイントとしてよく挙げられる一般的な格言です。一つの篭に全ての卵を入れてしまったら、篭を落としたときに全ての卵が割れてしまうことから、投資もこの様な事態を避ける様に分散投資すべき、と説いています。


では、バフェットはどうでしょうか。


上の円グラフで見た通り、総額の内、約3/4をたったの6銘柄にしています。17兆円をそれだけ数少ない銘柄で運用することは、とても分散投資とは言えません。バフェットはかつて、「分散は無知に対するヘッジ」と述べたことがあります。自分が理解出来る銘柄にのみ投資し、過度な分散を避けるべきであるという意味です。


一般的な格言を鵜呑みにせず、自身のやり方を貫いてきて成功したバフェットですが、我々一般投資家もポートフォリオの組み方を考える際に参考にすべき考え方なのかもしれません。