バフェットの名言の行間を読む①「株の理想の保有期間は”永遠”だ」
1988年のバフェットから株主への手紙の中で、バフェットは株の保有期間に就いてこう述べています。
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In fact, when we own portions of outstanding businesses with outstanding managements, our favorite holding period is forever.
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「優れた経営陣がいる傑出したビジネスを保有する際、我々が望ましいと考える保有期間は"永遠"だ」ということです。
不思議ですね。株式は"安く買って高く売る"のが基本なはずです。仮に同じ株式であっても、株価は乱高下するので割安なときに仕込み、割高になったら売る、ということを繰り返したほうが株主であるバフェットの手元に残るお金は多いはずです。
実はこの名言の裏には、税金の存在があります。1999年の同じくバフェットからの手紙を見てみましょう。
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Through my favorite comic strip, Li'l Abner, I got a chance during my youth to see the benefits of delayed taxes,....
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「benefits of delayed taxes」、つまり税金を繰り延べることのメリットを説明しています。この手紙の中でバフェットは漫画『リル・アブナー』の例を挙げて説明しています。話を要約するとこういうことになります。
「主人公リル・アブナーが恋した美女はお金持ちでなければ結婚できなかった。そこでモーゼ老人はアブナーに対してこうアドバイスした。『今持っている1ドルを20回2倍にしたら1百万ドルを手に出来るぞ』
真面目なアブナーは老人の教えに従って1ドルを毎年2倍にした。だが、20年を過ぎても2万ドルしか手元に残らなかった。1百万ドルを手にしたのはその8年後のことであった。」
モーゼ老人は税金の存在を忘れていました。毎年生まれるCapital Gainに対して35%の連邦税がかけられていたのです。
話は続きます。
「仮に老人がアブナーに対して『1ドルを年々倍になっていく一つの対象に投資してずっと保有していなさい』とアドバイスしていたら20年目に1百万ドルの資産を持っていたであろう。」
株は保有し続け売却しない限り、Capital Gainに関わる税金を繰り延べることが出来ます。アブナーが売却と課税を避けることが出来ていたら28年目には手元に221百万ドルが残り、毎年売買をしていたケースと比べると220百万ドルも多く手に出来ることが出来ます。
バフェットが好む"永遠"の裏には"永遠に税金を繰り延べたい"という意図が含められていたことがわかります。
ちなみにアブナーは、28年後にその美女にプロポーズしようとしたものの、そのとき既に美女ではなくなってしまっていたとのことでした笑