ウォーレン・バフェット ウォッチャー

"投資の神様"と名高いウォーレン・バフェット氏をウォッチするブログ。同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の動向と関連する情報をフォローする。

お金持ちになるには?バフェットの教え『生産性向上』

少し前の話になりますが、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ社が2016年の通期決算を発表、純利益は241億ドルでした。この中で特筆すべき点の一つは、2015年にバークシャー・ハサウェイとブラジルのプライベート・エクイティー(PE)である3G Capitalが主導して誕生したクラフト・ハインツ(https://finance.yahoo.com/quote/KHC?ltr=1)の業績が急回復したことです。純利益だけをとってみれば、2015年の647百万ドルから2016年は3,642百万ドルと大幅に改善しました。


3G CapitalはZero-Based Budgeting(ZBB)という手法で、買収した企業のテコ入れをすることで有名なPEです。過去にはバーガー・キングの買収・テコ入れ等の実績があります。彼らの手法の詳細は外からはわかりませんが、バフェットが2015年のバークシャー・ハサウェイのannual reportの中で、その考え方を『生産性向上』の観点から説明しています。annual reportにはこう記してあります。


『(Kraft Heinzに於ける投資で我々のパートナーである3G Capitalが実施した様な)改善はアメリカ建国以来、生活水準を向上させてきた「秘密」のソースである。残念ながら、「秘密」という言葉は至極適切である。なぜならば、あまりに多くのアメリカ人が生産性と繁栄の関係性を十分に理解していないからである。それらの関係性を把握する為に我が国の農業を良い例として挙げよう。」


つまり、生産性向上が達成されれば、繁栄(企業でいうところの業績回復)が達成されるというわけです。では、annual reportに書いてある数字を使って農業の例を見ていきましょう。


1900年の農業従事者は11百万人、全米の労働者の約4割を占めていました。彼らは30ブッシェル/エーカーの収穫率の農地 90百万エーカーを使って、2,700百万ブッシェルを生産していました。1990年ですから、第1次世界大戦がまだ始まってもいない時期なので、恐らく今のアメリカの大規模農業から想像出来る、航空機が農薬を散布して、大きなトラクターで刈り取る、というシステムは導入されていなかったと予想されます。


一方、115年を経た現在(2015年)を見ていくと、農地面積は殆ど変わっていませんが、収穫率が150ブッシェル/エーカーと約5倍になったことで収穫量は2,700百万ブッシェルから13,500百万ブッシェルと5倍になりました。更に特筆すべきは、収穫量が5倍になっているにも関わらず、農業従事者が3百万人とおよそ1/4にまで減っているのです。



生産性を収穫量(Output)/農業従事者(Input)とすると、1900年の245ブッシェル/人から2015年には4,500ブッシェル/人と18倍になったことがわかります。


この様な生産性向上は機械化、肥料の質向上、種子の品種改良等を通じて達成されたものです。仮に1900年から全米の農地を保有するオーナーがいたとして、人件費や生産物の価格が一定だとしたら、115年後には18倍もの生産性向上による利益を享受出来たということになります。この間、R&D(研究開発費)、設備投資等のコストを支払うことになりますが、これらのコストは少なければ少ないほど、この生産性向上の恩恵をより多く受けられることになります。


3G Capitalの手法は上記の考え方に基づいており、農地が増えなければ(=マーケットのパイが増えなければ)、余剰人員が出てくる為、結果的に人切りか一人当たりの人件費の削減をせざるを得なくなります。この点がしばしば批判の対象になる点なのですが、上記の農業の例でいえば、中国・オーストラリア・ブラジルなど他の農業国との競争に打ち勝たねばならず、生産性向上は必至であるとも言えます。達成出来なければ、他の農業国にマーケットを奪われていき、結果としてアメリカの農業が衰退し、長期的にみれば生産性向上による人員削減より多くの失業者が出ることでしょう。


資本主義社会においては、農地のオーナー(資本家)であろうと、農業従事者(労働者)であろうと、『生産性向上』を追求することが結果としてお金持ちになる(もしくは他人にお金を奪われていくのを防ぐ)為の唯一の方法なのである、ということをバフェットは暗に言いたかったのかもしれません。



次のバークシャーが考えていること ~マーケル・ホールディング~

投資の天才ウォーレン・バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の存在を知っている方はこう考えたことがあるのではないでしょうか?


「次のバークシャーとなる会社があるのであれば、知りたい」と。


実はあるんです。その会社の名前はマーケル・ホールディング(マーケル・ホールディング【MKL】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス)。バークシャーと非常に似たビジネスモデルで、保険のフロートを成長のエンジンとして実質的な投資会社となっています。



バークシャーとマーケルは共に上場会社の株を保有していますが、仮に投資で成功している両社のポートフォリオを理解し、共通の銘柄を知れば、是非その銘柄に投資したいと考える方も多いのではないでしょうか?


ということで、今回は2016年3月末に両社が共通して保有していた銘柄全6社をご紹介したいと思います。尚、保有する銘柄の総数はバークシャーが47社、マーケルが129社です。





第6位 ジョンソン&ジョンソン


バークシャー  第40位

マーケル    第15位


「バンドエイド」「リステリン」等、多くの家庭用品を作っている一方、医療機器で世界首位という顔も持つ会社です。実は一般向けよりも、医薬品や医療機関向けの方が割合は大きいという特徴があります。また、1972年の配当開始以来、増配を50年以上にわたって継続している銘柄です。詳細はジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) | 米国株 注目の50銘柄 | はじめての資産運用をご参照下さい。





第5位 リバティメディア


バークシャー  第22位
マーケル    第47位


リバティー・グローバルは大富豪で実業家のジョン・マローン氏が率いる米メディア関連会社です。ブロードバンド通信及びダイレクトツーウホーム衛星等を通じてビデオ・ブロードバンドインターネット及び電話サービスの提供をしています。平成23年12月31日現在、主に欧州及びチリの13カ国において1950万の顧客向けにサービスを提供。


2015年11月に英通信大手ケーブル・アンド・ワイヤレス・コミュニケーションズ(C&WC)を53億ドルで買収することで合意しました。合併後の両社の中南米・カリブ海地域での契約者数は1000万人以上となります。詳細はリバティ・グローバル(LBTYA) | バフェットの保有銘柄は? | はじめての資産運用をご参照下さい。








第4位 ビザ


バークシャー  第20位
マーケル    第16位



世界200カ国以上で使える「VISAカード」を発行する世界大手クレジット会社。20カード発行枚数は20億枚に達します。デビットカード・プリペイドカード・ATM決済サービスも手がけます。詳細はVISA(V) | 米国株 注目の50銘柄 | はじめての資産運用をご参照下さい。







第3位 ディア


バークシャー  第12位
マーケル    第11位


世界的な農業機械メーカーでコンバインなどの収穫機やトラクター・ブルドーザー・フォークリフトなどの土木・林業用車両の製造・販売しています。米国・カナダの売上が60%以上を占めています。詳細はディア(DE) | バフェットの保有銘柄は? | はじめての資産運用をご参照下さい。









第2位 ムーディーズ


バークシャー 第10位
マーケル   第36位


スタンダード&プアーズ(S&P)と並ぶ2大格付け会社の1つ。企業・債券などの信用力を調査して信用格付けを行っています。主に債券の発行会社から手数料収入を得て格付けを行っています。格付け業務としては世界約120ヶ国の企業発行体(約1万1千)、公的発行体(約2万1千)、証券化商品(約7万6千)の分析評価を行う最大手機関です。詳細はムーディーズ(MCO) | バフェットの保有銘柄は? | はじめての資産運用をご参照下さい。





番外編 バークシャー・ハサウェイ


マーケル   第1位


実はマーケルのポートフォリオの第1位はバークシャー・ハサウェイで約17%を占めています。様々な企業に投資しているとはいえ、やはり第1位はバフェットの運用方針が一番、ということなのでしょうか。









第1位 アメリカン・エクスプレス


バークシャー 第5位
マーケル   第40位


言わずとしれたグローバルにビジネスを展開するクレジットカード大手です。世界6大ブランドの一角を占め、特に富裕層に強いのが特徴です。詳細はアメリカン・エキスプレス(AXP) | 米国株 注目の50銘柄 | はじめての資産運用をご参照下さい。





さて、ここまでバークシャーとマーケルの共通銘柄全6社(番外編も含めると7社)を見てきましたが、共通点としてはブランドイメージを築いていて、顧客の層が広い企業が名を連ねています。




尚、我々一般投資家は両社のポートフォリオを真似する手法を採ることも出来れば、マーケル自体も上場会社である為、投資することが可能です。マーケルは未だ時価総額が1.5兆円程度に留まっており、規模が足かせとなるほどには至っていません。将来的にバークシャーがマーケルを買収することも有り得るのでは、と考えています。




バークシャー・ハサウェイ社のポートフォリオ (2016年3月31日時点)

バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社が2016年3月末に保有していた上場株のポートフォリオが発表されました。ここで発表されているのは上場株である為、我々個人投資家もバークシャーがどの様な株を持っているかを知ることが出来ますし、ポートフォリオを真似することも出来ます。


但し、あくまで3月末に保有していた株である為、時間差がある点にはお気を付け下さい。また、これらのポートフォリオを管理しているのはバフェットではなく、部下のトッド・コムズとテッド・ウェシュラーの2人である為、どちらかが選んだ銘柄である点も知っておく必要があります。


それでは2016年1~3月の間にバークシャーが①新たに購入した銘柄と②追加で購入した銘柄を見ていきましょう。


①新たに購入した銘柄


新たに購入した銘柄はiPhoneでお馴染みのアップル(AAPL: Summary for Apple Inc.- Yahoo! Finance)です。IT嫌いのバフェットでは考えにくい銘柄の選択になります(色々なニュースで「バフェットがアップルを買った」と報じられていますが、恐らく間違いです)。iPhoneの売上がかつての伸びを見せていない中、ここ1年でアップルの株価は下落傾向にありました。そんな中、US$10億(約1,100億円)を投じての株取得になります。



②追加で購入した銘柄




今までも保有していて更に買い増したのが、上記の9銘柄になります。特に注目されるのが、こちらもIT系でお馴染みのIBM(IBM: Summary for International Business Machines- Yahoo! Finance)です。表にある通り、バークシャーは2011年よりIBMを保有していますが、平均取得価格(US$)が時価を上回っているだけでなく、2016年1Qの決算で16四半期連続で減収を記録する等、業績の観点からも決して芳しい状況とは言えません。IBMについては「今後2年で売却より購入の可能性が高い」とバフェット自身が発言していることからトッドとテッドの意向だけでないことがわかりますが、株価も業績も冴えない中、バークシャーが正しければ(長期的に業績が上向き、株価がそれにつられて上昇すれば)、莫大な利益を生む投資になるかもしれない可能性を秘めています。


今回はアップル・IBMとIT関連株が注目されていますが、クレジットカードでお馴染みのVISA(V: Summary for Visa Inc.- Yahoo! Finance)や商業銀行のバンク・オブ・ニューヨークメロン(BK: Summary for Bank of New York Mellon Corpora- Yahoo! Finance)といった従来から比重の高かった金融株も買い増していることも今回の特徴でしょう。







外国株式 ブログランキングへ