ウォーレン・バフェット ウォッチャー

"投資の神様"と名高いウォーレン・バフェット氏をウォッチするブログ。同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の動向と関連する情報をフォローする。

資産と収益力の価値

「この企業の株価って割安なの?割高なの?」


この問いに答える為にはその企業の保有する資産、そこから生み出される収益を調査するプロセスであるValuationの結果と株価の比較が必要となります。当たり前ですが、Valuationの結果(= 価値)が株価(= 価格)が上回る場合にはその株価は割安となり、更に割安なものを見つけていない限りにおいては、"買い"となります。ではその企業の価値がどの様に計算すればよいのでしょうか?


コロンビア大学ビジネス・スクールのブルース・グリーンウォルドはその著書「バリュー投資入門―バフェットを超える割安株選びの極意」の中で企業の価値は①資産、②収益力、③成長の3つに分けられるとしています。

バリュー投資入門―バフェットを超える割安株選びの極意
バリュー投資入門―バフェットを超える割安株選びの極意
著者:ブルース グリーンウォルド
出版社:日本経済新聞社
カテゴリー:本

この3つの違いは何なのでしょうか。


例えばあなたが仕事はないが、1億円の余裕資金を持つフリーランサーだとします。儲かるのであれば何か事業を起こしたいが、アイディアを思いつくまではS&P 500の低コストIndex fund(1965~2014年の平均利回り(配当含む)は約10%)に投資しています。そんなある日、友人から「おれの知人がBalance sheetの大きさが1億円、全てEquity調達で、ROE 15%の会社(※仮にA社とします)をやっているんだけど、お前1億円と有り余る時間があるからやってみたらどう?」と囁かれます。あなたがA社の昨年のBSとPLを見たところ、BSは確かに1億円(全てEquity)でPLは売上 45、コスト 20、税前 25、税後(40%) 15でROE 15%という話は本当の様です。

「よし、S&P 500の10%の利回りよりいいから競合としてスクラッチからこの事業をやってみよう!利回り15%だし。」とあなたはB社を設立し、同様の事業を始めます。


設備を揃え、いざ商品を売ろうとしたときにふと考えます。「こっちのB社は後発だし、この商品のシェアってA社が100%だったよな。スイッチングコストを考えるとこちらが少し安値で売らないと顧客を奪えないだろうな。よし、A社より10%値引きして業界全体の需要を喚起して2倍にしよう。これならROEは12%程度だし。」

参入1年後にあなたはPLを見ることになります。「あれ?Volumeが5しか捌けていないな。何故だろう。A社は4だな。合計すると、元々A社が独占していたときの9のままだな。業界全体のパイがそのままでこちらの値引きで客が移ったに過ぎないのだな。まずいぞ、ROEが1.5%しか出ていない。」

業界のパイが値引きでは喚起されないと気づいたあなたは2年目の計画を策定する際にA社を徹底的に潰す作戦を採ります。「Priceを4に落とせば業界全体の需要がこちらに移るだろう。ROEが9.5%と10%に届かないけどこれが最大限の努力だ。」


2年後にPLを見たあなたは愕然とすることになります。「1年目とVolumeが全く同じだ。損益分岐点の売上しかたっていないから利益はゼロだ。A社が同じ価格設定としてきたことに気づかなかった。」

この一連のストーリーでわかる通り、あなたがB社を通じて参入を決めた0年目において、A社の業界における「競争優位」は全く存在しなかったことになります。あなたが業界に参入せずとも、C社、或いはD社が参入し全く同じ結果を引き起こしたからです。


では我々が仮に0年目でA社のValuationをした際に考慮すべきだったのは①資産、②収益力、③成長のいずれの価値だったのでしょうか。


皆さんおわかりの通り、①資産のみですね。A社はB社の参入1年後に既に利益がゼロとなっていました。つまり、②収益力の価値はゼロ(若しくは2年後にはマイナスを出したことを鑑みるとマイナス?)なのです。③成長は②の収益力が前提となった上での価値ですので、こちらもゼロであると考えます。


次回は①資産の評価方法、②収益力と③成長は如何なる場合に考慮出来るのかを考えたいと思います。


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