ウォーレン・バフェット ウォッチャー

"投資の神様"と名高いウォーレン・バフェット氏をウォッチするブログ。同氏がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の動向と関連する情報をフォローする。

バフェットとROE①コカコーラ

バフェットはAnnual reportにAcquisition Criteria(買収基準・条件)を幾つか挙げていますが、その中の一つに以下があります。


Qte
Businesses earning good returns on equity while employing little or no debt
Unqte


"ROEが高く、負債が少ない or 無い"ことが条件ということです。ここで、ROEの公式をおさらいしてみましょう。


ROE=収益性(純利益/売上高) × 効率性(売上高/総資産) × 財務レバレッジ(総資産/自己資本)ですね。収益性・効率性が同じであれば、財務レバレッジを高めるほどROEは高くなりますが、それは負債がゼロに近い、つまり財務レバレッジが1に近いほど良い、としているバフェットの基準と相反することになります。つまり、バフェットは収益性・効率性が高い事業ほど欲しい、と言っていると言い換えられることになります。


ではバフェットが素晴らしい事業と賞賛するコカコーラと日本のある清涼飲料メーカーAを例にROEを比べてみましょう。コカコーラはROE=収益性(16%) × 効率性(50%) × 財務レバレッジ(350%) = 29%です。一方、A社はROE=収益性(2%) × 効率性(151%) × 財務レバレッジ(224%) = 6%とROEには5倍弱の差があることがわかります。この差はどこから生じるものなのでしょうか。


最も差がある収益性を分解して考えてみたいと思います。


税前利益でコカコーラ 21、A 3と7倍の差が開いています。コカコーラは基本的にはコカコーラの原液製造とマーケティングに特化している会社です。我々が口にするコカコーラは、コカコーラ社から原液を購入した世界各地に点在するボトラーが水で薄めて販売しているものなので構造的にコカコーラ本社の利益率は高いのです。


では逆の視点で製造・マーケティング・販売までの全てを行っているA社がコカコーラと同じ収益性を手に入れるにはどうすればよいのでしょうか。


一番最初に思いつく値上げを考えてみたいと思います。


仮にA社が販売している製品を一律28%値上げし、コストは税金以外はそのままだとします。すると、税後利益は20残る為、収益率はコカコーラと同じ16%となります。更にバランスシートの構成が変わらないとすれば、このときのROEは69%となり、コカコーラの2倍となります。ただ、28%もの値上げはなかなか考えにくいでしょう。


では収益性を含むトータルの企業の指標であるROEがコカコーラ同様、29%となる様に逆算した場合、どれほどの値上げをすればいいのでしょうか。


税後利益(9)/売上高(110)=10%です。この場合、ROE=収益性(8%) × 効率性(166%) × 財務レバレッジ(224%) = 29%となります。


28%はともかく10%なら、と思われるかもしれませんが、値上げする為には理由が必要です。どのメーカーもほとんど同じ値段で販売している自動販売機を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。仮にA社の製品だけ10%高かったらそれ相応の理由がないと我々消費者は受け入れないでしょう。その理由の一つにブランド力が挙げられると思いますが、ブランド力を持つコカコーラの値段を押しのけて10%値上げしなければならないのです。非常に厳しい戦いを挑むことを意味します。


この様にライバルの立場になって考えていくと、コカコーラが非常に優れたビジネスを展開していることに気づくのではないでしょうか。バフェットが絶賛する理由にも納得感が増しますね。


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